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はじめに
「難聴」とは、(※)音が耳に入ってから脳に伝わるまでのどこかの段階で障害が起こり、音が聞こえにくくなったり、まったく聞こえなくなったりする症状のことをいいます。
難聴は放っておくと単に生活が不便になるだけでなく、認知症発症の危険因子のひとつとして厚生労働省をはじめ、国際アルツハイマー病協会などの団体が警鐘を鳴らしています。
難聴になると、聞こえを補うために補聴器の存在を思い浮かべる方も多いかと思います。
では、補聴器と似たようなもので「集音器」にもその効果があるのでしょうか。
結論から申し上げると、「集音器は難聴に効果があるとは言い難い」です。
どうしてなのか、詳しくご説明いたします。
難聴と認知症の関係についてより詳しく知りたい方は、「補聴器が難聴と認知症に与える影響」の記事をご覧ください。
(※)難聴(なんちょう)|厚生労働省e-ヘルスネット
難聴とは
難聴にはいくつかの原因がありますが、大きく分けると3種類存在します。
ひとつが「
それぞれの特徴は以下の通りです。
- 伝音難聴…耳の外耳や中耳に何らかの問題が発生した場合に起こる症状
- 感音難聴…耳の内耳やそれよりも奥の部分に問題がある場合に起こる症状
- 混合性難聴…伝音難聴・感音難聴の両方の症状が現れる症状
伝音難聴として代表されるのは、中耳炎や外耳炎、
伝音難聴は、適切な治療によって聴力の回復が期待できます。
一方、「老人性難聴」や「突発性難聴」などといわれるものは、感音難聴に含まれます。
感音難聴は、急性なものを除き完治が難しいとされています。
老人性難聴
主に、加齢が原因で耳の機能が老化して聞こえが悪くなる感音難聴のひとつで、「加齢性難聴」とも呼ばれます。
聴力は20代をピークに徐々に高音部から聞き取りにくくなります。
特に、会話音域といわれる500~2,000Hz音域の聴力が低下すると、難聴の症状が顕著にあらわれます。
老人性難聴の原因は、加齢による耳機能や組織の老化によるものです。
基本的な治療法はなく、進行を遅らせるなどの対処療法が中心となります。
老人性難聴についてより詳しく知りたい方は、「老人性難聴(加齢性難聴)について」の記事をご覧ください。
突発性難聴
前ぶれもなく、突然に片方の耳(稀に両耳)が聞こえにくくなる急性の感音難聴です。
難聴だけでなく、耳が詰まった感じや音が二重に響く、耳鳴りやめまい、吐き気なども突発性難聴の症状のひとつです。
発症年齢は比較的若く、30~60歳で発症する割合が多いです。
軽度であっても一刻も早く適切な治療(主に投薬)を受けることが大切です。
突発性難聴は、適切な治療を素早く開始することで聴力の回復が期待できる場合があります。
逆に、治療開始が遅れると難聴と生涯付き合う可能性が高まります。
集音器とは ~補聴器との違い~
集音器は、イヤホンやヘッドホンと同じく「音響機器」や「家電」といった類のものになります。
一方、補聴器は難聴者を想定して作られた「管理医療機器」にあたります。
集音器は、周囲の音を一律に大きくして聞き取りをサポートします。
補聴器は人の声を優先的に大きくすることに優れており、大きな音は抑制する機能があります。
集音器と補聴器の違いについて詳しく知りたい方は、「「補聴器と集音器の違いって何?」を分かりやすく解説」の記事をご覧ください。
なぜ集音器は難聴に効果的ではないのか
難聴に対して、補聴器は効果的なのに集音器がそうでないのはなぜでしょうか。
集音器は、医療機器ではないので難聴者の聞こえを補うには適しません。
具体的には、以下の問題があります。
- 安全性
- 補聴効果
安全性
集音器は、周囲の音を一律に大きくしてしまうので、耳にダメージを与える可能性があります。
大きすぎる音は、難聴の発症や悪化の要因になります。
一方、補聴器には「出力制限」という機能があり、大きすぎる音は抑制するなど安全性が担保されています。
補聴効果
集音器は、必要とする音以外も大きくするので、騒がしい場所では会話が聞き取りづらく補聴効果が期待できないケースがあります。
その点補聴器は、雑音を取り除いて人の声を優先的に大きくするので、聞き取りがしやすく補聴効果が得られやすいです。
聞こえのトレーニングをすれば、雑多な場所でもしっかりと会話を聞き取ることが可能になります。
補聴器は認知症に効果的なのか?
実は、補聴器が認知症を予防する確たる効果は、いまのところ確認できません。
ただし、補聴器を用いることで認知症の発症リスクを軽減できる可能性が示唆されています。
補聴器を使うことで、
- 適切な「聞こえ」を維持
- ご家族や友人とのコミュニケーションを楽しみながら脳を活性化
- 認知症を予防したり、発症・進行を遅らせたりする
と考えられているのです。
実際に研究では、難聴があると認知機能の低下や脳の萎縮が進みやすいことが明らかになりつつあります。
なので、適切に補聴器を導入すれば認知症の発症を軽減させることができるのでは、と考えられています。
こちらについてより詳しく知りたい方は、「補聴器の役割について ~認知能力低下の抑制も示唆されています~」の記事をご覧ください。
まとめ
集音器は難聴に対しての効果が期待できないことと、その理由を解説いたしました。
集音器は、難聴とまではいかないものの、聞こえにくさを感じる人に向けての音響機器となります。
難聴を自覚している人は基本的に補聴器の使用をおすすめいたします。
ただし、難聴だからとすぐに補聴器を購入するのではなく、耳鼻咽喉科(補聴器相談医)で聴力検査を行ってください。
耳垢や病気が原因で一時的な難聴だったというケースもあるからです。
耳鼻咽喉科(補聴器相談医)は以下のリンクから探すことができます。
お近くの耳鼻咽喉科(補聴器相談医)を探す|(一社)日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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