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はじめに
「聞こえ」は、人にとって非常に大切な感覚の1つであり、コミュニケーションにおいて欠かせないものです。
しかし、難聴を放置するとどうなってしまうのでしょうか。
こちらでは、難聴を放置するとどうなるのか、そして必要な対処法についてご紹介します。
難聴とは
難聴とは、(※1)音が耳に入ってから脳に伝わるまでのどこかの段階で障害が起こり、音が聞こえにくくなったり、まったく聞こえなくなったりすることで、音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくい、あるいはまったく聞こえないといった症状のことです。
(※1)参考:難聴(なんちょう)|厚生労働省e-ヘルスネット
具体的な難聴の症状をご紹介します。
片耳だけに起こりやすい突発性難聴
何の前触れもなくある日突然に起こるのが「突発性難聴」です。
突発性難聴の症状としては、難聴だけでなく聞こえにくさも含まれます。
すなわち、下記のような症状があらわれます。
- 耳が聞こえなくなった、聞こえ方がおかしい
- 耳が詰まった感じがする、閉塞感がある
- 音が何重にも重なって聞こえる、響く
- 耳鳴りが続く
- めまいや吐き気、頭痛がする
好発年齢は、30~60代で男女差がなく、特に50代が多いといわれています
基本的には左右どちらかの耳に起こりますが、稀に両耳にも発症することがあります。
20~40代の若い人に多い低音障害型感音難聴
突発性難聴と症状が似ているため判断が難しいのが、「低音障害型感音難聴」です。
20~40代と比較的若い人がなりやすく、基本的には片耳に起こります。
突発性難聴との違いは、「耳がこもった感じがする」ことです。
低音性難聴の場合、以下の症状があらわれます。
- 耳が詰まった感じがする
- 耳に水が入っているように感じる
- 低い音の耳鳴りがする
- なんとなく聞き取りにくい
- 自分の音が大きく聞こえる
年とともにあらわれる老人性難聴(加齢性難聴)
加齢にともなう耳の老化により、徐々に音が聞こえなくなる難聴を、「老人性難聴(加齢性難聴)」といいます。
老人性難聴になると、一般的には高い音が聞こえづらくなります。
高い音はもともと聞き取りにくい音なので、症状の出始めは難聴と自覚する人が少ないです。
老人性難聴の有病率(推計)は、以下の通りです。(※2)
65~69歳 | 70~74歳 | 75~79歳 | 80歳以上 | |
---|---|---|---|---|
男性 | 43.7% | 51.1% | 71.4% | 84.3% |
女性 | 27.7% | 41.8% | 67.3% | 73.3% |
(※2)参考:Uchida Y, Sugiura S, Nakashima T, Ando F, Shimokata H: [Estimates of the size of the hearing-impaired elderly population in Japan and 10-year incidence of hearing loss by age, based on data from the National Institute for Longevity SciencesLongitudinal Study of Aging (NILSLSA)]. Nihon Ronen Igakkai zasshi. Japanese journal of geriatrics 2012; 49: 222―227.
老人性難聴になると、以下のような症状や行動が目立つようになります。
- 今まで聞こえていた音が聞こえない
- 「えっ?」と聞き返すことが多くなった
- 複数人の会話についていけない
- テレビやラジオの音が異常に大きい
- まわりが騒がしいと聞き取りにくい
- 玄関の呼出音に気付かない
- 家電製品のアラームに気付かない
その他の難聴
上記以外にも、さまざまな症状で難聴が起こります。
- 中耳炎
- 外耳炎
- 耳硬化症
- 耳垢栓塞
- 音響性難聴
- メニエール病
- ムンプス難聴
これらの難聴の原因は、加齢や遺伝、聴覚損傷などさまざまです。
それぞれの原因や対処法を知りたい方は、「難聴の原因は? 症状別の原因と対処法について」の記事をご覧ください。
難聴を放置してはいけない理由
難聴を放置することは、百害あって一利なしです。
こちらでは、その具体例をご紹介します。
聞こえに違和感があったときは、念のため耳鼻咽喉科を受診してください。
突発性難聴や低音障害型感音難聴を放置すると
突発性難聴や低音障害型感音難聴が疑わしければ、なるべく早く耳鼻咽喉科を受診してください。
どちらも確実な治療法が確立されていないため、早期に受診することがなによりも大切だといわれています。
目安としては、発症後遅くとも1週間以内といわれていますが、早ければ早いほどいいです。
放置して治療の開始が遅れると、難聴のまま回復が見込めなくなるケースもあります。
受診するのは、耳鼻咽喉科(耳鼻科)です。
くれぐれも、放置することのないようにご注意ください。
老人性難聴(加齢性難聴)を放置すると
老人性難聴は、徐々に難聴が進行していくため正確な発症時期を知る術はありません。
ですから、聞こえづらさに気付いたときに耳鼻咽喉科(耳鼻科)を受診するようにしましょう。
老人性難聴は体の老化現象ですので、自然治癒することはありません。
ゆっくりゆっくりと進行していきますが、耳鼻咽喉科(耳鼻科)を受診することで、予防したり進行を遅らせたりすることができます。
コミュニケーションの障害
聴力が低下することで、周囲の音や人の声が聞こえづらくなります。
そのため、会話やコミュニケーションに支障をきたすことがあります。
特に騒がしい場所や複数人での会話が聴き取りにくくなります。
進行すると1対1での会話も聞き取りづらくなります。
認知症のリスクの増加
「難聴」は認知症を引き起こす危険因子のひとつです。
厚生労働省が2015年に策定した『新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)』において、難聴は認知症の危険因子のひとつに挙げられています。
同時に「(※3)難聴は予防できる要因のなかで最も大きな因子」ともいわれています。
積極的な対策で発症リスクを下げることができるかもしれません。
(※3)Livingston G, et al. "Dementia prevention, intervention, and care" Lancet (2017)
運転や交通安全への影響
交通事故の原因のひとつに聴力の低下があります。
自動車や自転車の運転中、周囲の音を聞き取りづらくなると、事故につながることがあります。
また、危険を知らすクラクションや踏切の警告音などが聞こえづらいと、危険にさらされる可能性が高くなります。
▽社会生活における制限
聴力が低下すると、音楽や映画、テレビ番組などのエンターテインメントを楽しむことが難しくなる場合があります。
また、公共の場でのアナウンスやスピーチも聞き取りづらくなります。
ご近所付き合いやお店での買い物も、難聴によって思い通りにならないケースも考えられます。
実際に、(老人性)難聴者はうつ病やひきこもりの可能性が高いとされています。
参考:補聴器ハンドブック 原著第2版|Harvey Dillon(原著),中川雅文(監訳) 医歯薬出版
放置しないための対策
難聴を放置しないためには、以下のような対策が考えられます。
定期的な聴力検査を受ける
年齢とともに自然な耳の老化が進み、聴力が低下することがあります。
定期的な聴力検査を受けることで、早期の発見・対処が可能になります。
会社の健康診断や自治体の一般健康診断を活用して、年に一度は聴力検査も併せて行うようにするか、お近くの耳鼻咽喉科で定期的に聴力検査を受けましょう。
大きな音や騒音を避ける
大きな音や持続的な騒音による聴覚障害が報告されています。
そのため、騒音のある環境に長時間いることを避け、なるべく大きな音は聞かないようにしましょう。
周囲に大きな音がある状況では、耳栓などを使用して耳を騒音から守りましょう。
健康的な生活習慣を維持する
健康的な生活習慣を維持することで、生活習慣病や疾患による難聴のリスクを低減することができます。
以下で耳にいい食事をご紹介していますので、参考にしてください。
適切な治療を受ける
難聴の原因によっては、治療が可能な場合があります。
病気によるものや耳垢の詰まりによるものなどです。
まずは、耳鼻咽喉科で適切な治療を受けるようにしましょう。
おわり
もし、ご自身や周りの方が難聴を疑うのであれば、早めに耳鼻咽喉科(耳鼻科)を受診してください。
また、ケースによっては補聴器の装着が効果的です。
補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科(耳鼻科)の受診をおすすめします。
お近くの補聴器相談医を探す|(一社)日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
補聴器の使用をすすめられたら、ぜひ前向きに補聴器装着の検討をしてください。
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